社会学概論 | 社会心理学 | 学生による授業評価報告


 

 

 

社会学科「専門選択」2・3・4年選択/「社会教育主事」2・3・4選択科目:4単位(担当:坪井 健)


 

 

 

はじめに

 

社会心理学は、私たちの日常生活に身近なテーマを数多く研究している面白い学問です。社会心理学の受講生には、この学問の面白さをわかってほしいという願いを込めて、この一年間の授業を展開したいと思っています。体系的な学問として社会心理学を紹介するより、皆さんが興味の持てそうなテーマを選んで講義する予定ですので、講義内容はトピックスの羅列のようになるかもしれません。お勧めするわけではありませんが、この講義はつまみ食いしても十分理解できるはずです。まず、そうした点を十分理解した上でこの講義を受講してください。

 

 

 

講義のねらい

 

この講義は、個人の社会的行動、対人関係、集団行動と個人、集団心理現象など、われわれが日常的に出会うテーマについて、社会心理学の興味深い研究成果を紹介する。社会心理学は、元来社会学と心理学の境界科学であり、実験、テスト、観察、調査など社会学と心理学の研究方法が用いられており、社会学の領域から見れば、かなり心理学的色彩の強い研究が含まれる。この講義では、境界科学としての特徴を生かし、具体的テーマを中心に、ビデオ教材を利用したり、小実験や心理テストなど多彩な方法を用いて授業を展開したいと考えている。

 

 

 

講義内容・授業スケジュール

 

1.

はじめに −講義の方針と受講の仕方−

2.

社会的自己のはなし ―自己過程の社会心理―

3.

他者との関わり ―友人関係と対人魅力―

4.

対人関係の心理 ―援助行動と社会的影響―

5.

集団の中の個人 ―同調行動と意思決定―

6.

文化現象と個人 ―異文化と日本人―

7.

現代社会と個人 ―現代人の社会心理―

8.

その他(社会的認知、社会的欲求、態度変容、リーダーシップなど)

 

 

 

履修上の注意

 

1.

授業中に、小実験や心理テストなどを行うことがあるので積極的に参加すること。

2.

授業内容は通年テーマの概略である。授業の流れとの関係で内容や順序は変更することもある。

3.

授業中は配布プリントを参考にノートをとり、さらに深く研究する人は、紹介した文献を参考に自主的に学習することが望ましい。

 

 

 

成績評価の方法

 

1.

出席+毎時間の受講態度、感想、意見、質問など(30%)

2.

課題レポート・期末試験(70%)

 

 

 

教科書・参考書

 

坪井が執筆したテキストには以下のものがある。

 

1.

穴田・坪井他著『こころ・行動そして社会』人間の科学社、1986年  ¥2800

2.

坪井健著『国際化時代の日本の学生』学文社、1995年  ¥2800

 


 

 

 

 

 

社会心理学は、我々の日常生活で経験する様々な社会心理現象を研究する科学である。社会心理学は、その名前が示す通り、社会学と心理学の境界領域の学問である。そのために、研究関心や研究方法が異なる2つの伝統が併存している。まずは、社会心理学の学問の特徴をその歴史と研究の流れから明らかにしておきたい。

 

 

 

1.

社会心理学とは

 

「人間の社会行動が社会的な多くの要因によって、どのように影響されるか、その影響過程を明らかにすることを目的にする科学である」(p.12)

 

 

2.

境界科学としての社会心理学(T.M.Newcomb)
社会心理学の主題
諸個人の相互作用を研究する学問

3.

社会心理学のはじまり

 

@

E.A.Ross:Social Psychology(1908) アメリカの社会学者
フランスのタルドの影響下、群衆行動や流行現象などの集合行動の研究

A

W.McDougall:Social Psychology(1908) イギリスの心理学者
人間の社会的行動の基礎を12の本能で説明した。

 

 

4.

日本の社会心理学のはじまり

 

@

元良勇次郎(心理学者) 1890年、日本最初の「心理学」書
社会心理学を社会学の一分野と規定した。心理学的社会学全盛時代

A

徳谷豊之助『社会心理学』(1906)
樋口秀雄『社会心理の研究』(1908)/谷本富『群衆心理の新研究』(1908)

B

戦後の社会心理学
南博『社会心理学』(1957)最新のアメリカ社会心理学研究を紹介、ブームになる。

C

日本独自の社会心理学「社会意識論」:マクロな社会心理現象への関心
フロムの「社会的性格」論とマルクス主義のイデオロギー論を基礎とする社会意識研究

 

 

5.

社会心理学研究の現状

 

@

G.W.Allportの研究 1908年〜1958年までの50年間
社会心理学のテキストの著者。2/3は心理学者、1/3は社会学者

A

1960年代、『今日の社会心理学』:18名の執筆者の大半は社会学者、心理学者はいない。

B

日本の現状: 心理学界:心理学の一分野として体系的に取り扱う傾向がある。
社会学界:「社会心理・社会意識論」は、社会学の一分野として人気の研究領域である。

 

 

6.

「社会心理学」(社会学的社会心理学)か、「社会心理学」(心理学的社会心理学)か

 

私は、社会学の研究者。専門領域は「社会心理・社会意識」。具体的研究は「学生文化の国際比較研究」など, 研究者としては社会学的社会心理学者。教育者としては心理学的も社会学的も区別せず紹介する。

 

 

 

[参考文献]

 

1.T.M.Newcomb『社会心理学』培風館、1956
2.井上隆二・山下富美代『図解雑学社会心理学』ナツメ社、2000
3.山岸俊男『社会心理学キーワード』有斐閣、2001
4.穴田・坪井他著『こころ・行動そして社会』人間の科学社1986